第28章 【義妹、行動開始】
縁下美沙は義兄の力を始め多くの者から半分ボケと言われる。中にははっきり天然ボケ扱いする者もいるが大体において半分とされるのはまるっきり何も知らないとか何も考えていない訳ではないからだ。
そういう訳で美沙は考えていた。万一の事が起きて生きてるかもしれない実父により縁下家から連れて行かれるかもしれない、それは自分にとって最大の恐怖だがプルプル怯えてばかりなのはよろしくないのではないか。
そう思い始めると美沙の思考は止まらなかった。まずこの恐怖はどこから湧くのだろうか。すっかり自分が義兄の力に依存し義兄からも溺愛されたこの状態で離れるなんて考えられないから、ではある。しかしそれ以前の問題な気がする。入れているスマホアプリのアップデートをしながら考えた。怖いって思う場合ってなんやろう。勉強机用の椅子に座り体を左右に揺らしながら美沙はうーんと唸る。しばらく唸って美沙は気づいた。相手について情報が一切ないからだ。未知なるものは怖いに決まっている。せや、と美沙は思う。本当のお父さんについての情報が欲しい、どないしたらええやろ。この辺りは亡くなった祖母が墓まで持って行ってしまい義父母である縁下夫妻も一切教えてはくれない。
「一番は顔知りたいんやけどなぁ。」
アプリのアップデートがまだ終らないスマホを勉強机に置き、椅子に座っていた美沙は天井を仰いだ。
「ばあちゃんは親亡くなった言うといて遺影も何も置いてへんかったもんな。」
呟きつつも美沙はハタと思って姿勢を正した。望みは薄いがとりあえずどこを探すか決まった。
義兄の力はまだ帰っていなかった。義父は勿論仕事中で義母は買い物に出かけていた。やるなら今のうちである。狙いは引っ越す時に自分が持ってきて今は場所の都合で義母に預けているアルバム、別に自分の持ち物なのだからその必要はないはずなのに美沙は何となくこっそりと義母がアルバムを保管している部屋に入った。