第27章 【外伝 成田一仁の感慨】
「おばあさんの形見って。」
「ガラケーからスマホに変えた時おばあさんが作ってくれたんだってさ。」
「それをずっと下げてるなんて義理堅いんだな。」
成田は感心したのだが力はあ、いやと苦笑した。
「そもそもスマホ大好きらしい。」
「マジか。」
木下が食いつく。
「少なくとも俺は初対面で林檎印のコンピューターとスマホはわからないとか何とか言う子は初めてかな。」
ああなるほどと成田は思った。確かに普通は林檎印が云々以前の問題だろう。
「詳しいのか。」
更に面白がった木下が聞きたがる。
「多分。レベルでいうとどんなもんか俺にもわからないけど、アプリをあちこちから呼び出してるみたいでさ。」
「あちこちってホーム画面以外から呼び出すのか。」
成田もつい聞いてしまった。失礼承知だが何となく縁下の両親はとんでもないのを拾ってきたんじゃないかという気がする。成田の問いにそれがと力は歯切れ悪く言った。
「見間違いじゃなきゃ通知領域に何かいっぱいアイコン並んでた。あんなの元からある設定だけじゃ出来ないと思う。他にも何か引き出して操作してた気がするし。」
成田は木下と一緒に吹いた。そして我慢しきれず成田はつい口にした。
「あ、あのさ縁下、お前別の意味で大丈夫か。」
「別の意味って。」
「その、そんなマニアックな匂いのする子相手するのキツくないか。」
縁下の事だ頑張って受け入れる努力はするだろうけどと思いつつ成田は聞かずにおれなかった。すると力は笑った。
「そっちは大丈夫だよ。パソコンも得意みたいだからむしろお得かな。」
ここでやはり木下が反応する。
「おおすっげー。なあなあ、スマホで何かわかんなかったら教えてくれるかな。」
「何気に親切だから大丈夫だと思う。ただ人見知りが凄いから目は合わせないと思うけど。」
「マジか。サングラスでもするか。」
「やめろよ余計にビビったらどうするんだよ。というか泣かしたら怒るからな。」
「じょーだんだって。」
ムッとする力、冷や汗タラタラな様子の木下を見て成田は思わず微笑んだ。
「何笑ってんの、成田。」
キョトンとする力に成田は思ったままを言った。
「泣かしたら怒るって今言えるくらいだから仲良くなるのに時間はかからないなって。」
力の顔が真っ赤になった。