第27章 【外伝 成田一仁の感慨】
「全然きつくないけど単純。」
「日向と影山並みか。」
「あいつらよりはもうちょっと落ち着いてるけどね。」
しれっと言った力に木下が吹いた。
「でさ、」
成田は更に言う。力の様子からして他にも何かありそうな気がした。
「お前他にひっかかってることがあるんじゃないか。」
図星だったらしい、力は力なく笑った。
「俺まだあの子のこと妹だって思えてないんだ、きっと。だからちゃんと妹ですって言える自信がないんだよ。」
「そうなのか。」
木下が首を傾げる。
「だって」
今度は自嘲気味に力は笑う。
「まだちゃんと名前呼べてないんだ。どんな子かもチラッとしかわからない。向こうはお兄さんとは言ってくれるけど敬語のまんまだし。」
「えーと、あの子何て名前だっけ。」
「美沙。」
「縁下的に呼びにくい名前なのか。」
「いきなり呼び捨ては抵抗あるよ。」
「相手がこないだまで他人だったらそらそうか。」
力と木下のやり取りを聞いていた成田は少し考えてここでボソっと言った。
「お前嫌われてるの。」
「それはないと思う。帰ったら顔出して話しかけてくるし。変に遠慮してるとこはあるけど。」
「じゃあ良かった。」
成田は心底ホッとして言った。となれば言うことは一つしかない。
「とにかくお前、早く腹を決めよう。」
指摘された力がうっと唸った。
「そういうのをそのままにしといたらいけないのは自分でわかってるだろ。」
力はうぐっとなってうなだれる。普段なら自分が言われているであろう事を逆に力に言っているのは何となく面白いと成田は思ってしまう。
「頑張るよ。」
「そういえば」
ちょっと深刻めいてきたと思った成田はここで話題を変える事にした。
「話変わるけどさ、あの子が肩から下げてるあれ何。廊下で見かけて不思議だったんだけど。」
ああと力が笑う。
「スマホ入れてるケースだよ。本人は何てったかな、ああそうガジェットケースって言ってるけど。」
「ガジェットって何だ。」
「道具って事だけど持ち歩き出来る電子機器で目新しい奴の事を言ったりもするみたいだな。おばあさんの形見だって。」
尋ねる木下に答える力、更に気になる所があった成田は思わず聞いてみた。