第27章 【外伝 成田一仁の感慨】
「妹なんだ。」
「へ。」
力の声がかすれていたので木下が聞き返し成田は聞こえていたが耳を疑った。雰囲気が伝わったのだろう、力は半ばやけくそな様子でもう一度言った。
「妹なんだよ。」
成田は木下と一緒にキョトンとした。
「え、でも」
木下が呟き成田は自然と後を繋ぐ。
「お前あんな妹さんいたっけ。初耳なんだけど。」
力がため息をついて言った。
「正確には妹が出来た。それがあの子。」
今度は木下と2人で固まった。固まるなと言う方が無理なのは力が一番わかっていたかもしれない。
ちょっとの間固まってから
「げえええええええええっ」
成田と木下は盛大に動揺した。
「い、妹が出来たってどゆことだよっ。」
木下が叫ぶ。
「義理の妹が出来たんだ。」
「お、おいてーことはまさか一緒に住んでんのかっ。」
「そうだよ。親がいなくて育ててくれたおばあさんも亡くなって身寄りがなくなったとこをうちの親が引き取ったんだから。」
「ひえええっ、何だそれどこのドラマだっ。」
「俺が聞きたい。」
「変な時期に編入してんなってあちこちで話になってたの聞いたけど何だよその重すぎる事情。とゆーことは」
「うちに来るまでは他の学校で違う名前だったんだ。」
木下がうわああああああと騒ぐ。ここで木下と力のやりとりを聞いていた成田はハッとする。
「だから誰かに聞かれてもお前即答しなかったのか。」
「そう。」
成田はマジかーと空を仰ぐ。
「確かにいきなり言えないよな。」
「そう。で、まずはお前らに言った。」
「当のその、妹さんはどうしてるんだ。」
「実は谷地さんと席が隣で仲良くなったんだ。だから谷地さんにはすぐ言ったってさ。」
「谷地さんそんな話してたか。」
木下が首を傾げる。
「状況察して今は黙っててくれてるんだと思う。俺としては部の皆には自分から言いたいとは思うけどまだ言いづらい。」
「わかる。」
成田は苦笑した。
「田中と西谷がうるさそうだもんな。あとは日向あたりかな。」
「いやーそれより月島があぶねーわ、おちょくってきそう。」
「むしろ俺としては月島とあの子がぶつかりそうな予感がして怖い。」
「気がきついのか。」
成田は恐る恐る聞く。縁下美沙を壇上で見た限りはそう見えなかったのだが。