第25章 【不穏な影】
「フラグ立つからやめとこ。」
「ああ、そうだな。」
そうやって頭を撫でられながら美沙は目を閉じて力にしがみついた。
フラグが壊せるかどうかはまだわからない。ただ、縁下兄妹の知らない所ではこんな声が聞こえる。
「あら奇遇ね、久しぶり。」
そう言われた方は笑ったようだった。
「まさかこの辺をウロウロしてるなんてどういう風の吹き回しなの。」
聞かれた相手は何事か答えた。
「やっぱりあの子。だけど会ってどうするつもりなの。」
相手はまた何事か呟く。
「向こうは話なんてないと思うけど。アンタの事なんて知らないしもうすっかり今の家に馴染んでいるわ。そもそも意外と未練がましいのね。」
相手はせせら笑った。
「呆れた奴ね、あの子は確かに顔も天然ボケも先輩そっくりだけど子供ごと恋人捨てたアンタに優しくしてくれるかしら。」
ここでカッカッとハイヒールの音が響き、一瞬止まる。
「ああ、機械に強い所だけはアンタに似たわね。」
そしてハイヒールの音が再び響き、穏やかではない知らない会話は終わる。
不穏な影が縁下兄妹に近づきつつあった。
次章に続く