第3章 【欲しいもの】
とある夜の縁下家、食堂の椅子に座って珍しくコンビニで買ったゼリーを食していた美沙のところへその話は降って湧いてきた。
「え、誕生日プレゼント。」
聞き返す美沙に義母は頷き、まだ先の話だが希望があるなら聞いておきたいという。
「そんな、私別に。」
美沙はモゾモゾとした。義兄の力やその友などから何か貰う事はあっても自分から求める事は非常に少ない。しかし義母は美沙が娘になってから初めての誕生日祝いだからと義父とも話して決めた、とんでもな事を言う子でないのはわかっているし遠慮する事はないという。つまり美沙としては義父母の好意を無下(むげ)には出来ない方向だ。しかしいきなりなのも手伝って困った挙句美沙は言った。
「すぐ思いつかんからちょっと考える。また言うね。」
義母は笑って待っていると言ってくれた。美沙は義母に礼を言い、ゼリーを食すのに戻った。
ゼリーを食した後、美沙は義兄の力の部屋にいた。
「ちゅう訳やねん。」
義兄のベッドの上で腹這いになってコロコロしながら美沙は言った。へえと言いながら勉強机の前に座っている義兄の力がその姿を見て後で愛でようなどと思っている事には気づいていない。
「母さんがそこまで。俺が言うのもあれだけど本当お前の事溺愛してるな。」
「うん、ありがたいことやわ。せやけどどないしょう、私特に欲しいもんがない。」
そう言ってもいいのかもしれないがせっかく義父母が言ってくれてるのだ、何か考えておきたい所である。
「ううう、困った。」
「お前意外と物欲低めだもんな。キノコキャラのもあのバレーボール漫画のもグッズ片っ端から買うとかしないし。」
力は笑って言ったが美沙はちゅうか、と言う。
「欲しかったもんはもうあるもん。」
え、と力に言われた美沙はだってと話を続けた。