第24章 【ラーメン食べたい】
はたから見るとなかなかの光景かもしれない。高校バレーボール界では有名である及川と岩泉、その横にはあの烏野に属するが別に名が知れているわけではない縁下力とその義妹が揃ってラーメンを食している。
「そんでこっちに来たのか。」
「ええ。」
「びっくりしたよもー、縁下君ともあろう人がムード無いことするなと思ったら。まさかの美沙ちゃんのリクエストなんてさ。」
「ムードて何の話。」
「相変わらずナノネ、この子は。」
「その"この子"をつけまわした挙句他校のパソコン部にまでいじられたのはどこのクソ川だ。」
「岩ちゃん伏せる気全然ないでしょっ。」
抗議する及川を無視して岩泉はそん時ゃホントに悪かったと力に言う。
「いえ、岩泉さんがいらっしゃったという話なので逆に安心しました。」
「とはいえ見た感じあのパソコン部の連中、結構しっかりしてやがるな。あいつらと一緒なら早々のことは起こらないんじゃねーか。」
「と俺も思います。美沙が入部したいって言った時は心配でしたけど。あと、自作ゲームのキャラの声当てさせてるのはちょっと、ですね。」
「その辺はオタク集団なのな。おめーの妹もプログラムとかやんのか。」
「いえ、プログラムとか絵はもっと上手なのがいるらしくて。でも美沙はキャラの声以外にオープニングの動画編集頼まれたらしいです。」
「よくわかんねーけど、大抜擢って感じがするな。」
「意外と動画編集できる人員がいなかったみたいで。」
「水を得た魚だな。」
一方の美沙は及川に絡まれていた。
「美沙ちゃん、替え玉頼むの。」
「ここの結構盛ってはるからそない食べられるかわからへん。ちゅうか私の事大食い思(おも)てへん。」
「え、違ったのっ。」
「及川さん、それ他の女の子に言うたらどつかれますよ。」
「美沙ちゃんだから大丈夫なの知ってるもんね。」
「どや顔しぃなっ。それに私そない大食いかなぁ。」
「少なくとも俺が知ってる中では一番食べてるよ。なのに相変わらず細いねぇ、食べたのどこにいってるの。」
「ふぎゃんっ。」
力が岩泉と話し込んでいる隙に及川の指が首筋をなぞってきたので美沙は小さく叫ぶ。当然力と岩泉の耳に入った。