第24章 【ラーメン食べたい】
その日は両親が外出していた。帰りは夜遅くなるということで縁下力と美沙の義兄妹は夕飯は2人で適当に食べておいてくれと言われた。大抵こういう場合は料理下手を自称する―ただし実際の所はそんなにひどくない―美沙が奮闘して作ることが多いのだが今日は美沙もパソコン部で疲れ気味だった。疲れ気味なのはパソコン部で作っているというノベルゲームで美沙が萌えっぽいデザインの女の子キャラを演じさせられているからではないかと力は疑っているがそれはとりあえず置いておこう。
「じゃあどっかに食べにいこうか。」
家に帰ってきてからそう言う力に美沙は頷いた。
「何食べたい。」
過保護だのシスコンブラコン同士だのくっつきすぎだの言われている割に2人はあまり兄妹で外に食べに行くといったことがない。こんな時くらい美沙に聞いてやってもいいだろうと力は思う。すると当の義妹は力のベッドの上で小首を傾げてから言った。
「ラーメン。」
「え。」
「ラーメン食べたい。」
意外な答えに力はキョトンとした。
という訳で事は決まり、兄妹は夜の道をトテトテ歩いていた。
「まさかお前からそう来るとは思わなかったよ。」
力は言った。
「アカンかった。」
横で少し不安そうにする義妹に力はそうじゃないよと笑う。
「何か意外でさ。」
「ばあちゃんが好きやなかったらしくてほとんど食べたことないねん。こっち来てからも食べてないし。」
「それで丁度いいと思った訳か。」
それは納得したが美沙が妹になってから結構経つのにまだまだ知らないことがあるなと力は思う。
「あの、兄さん」
「何。」
「何でナデナデしとんの。」
「嫌なのかい。」
「ちゃうけど。」
「何となく。」
「う、うん。」
暗くてわかりづらいが多分義妹は照れているのだろう、俯きながらもギュッと力の手を握ってきて力はその小さな手を握り返した。