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【ハイキュー】エンノシタイモウト第三部

第23章 【外伝 村人B、衝撃の回想】


やっぱりスマホケースだったんだと谷地はぼんやりと思い、スマホを操作する編入生の手元を見つめる。何やらフリック入力をしているが入力スピードが妙に速い気がする。そうして入力を終わらせたらしき編入生はスマホの画面を谷地につきつけた。なんだろうと思った谷地はその画面を見てゲゲーンッとなった。

"その人は私の義理のお兄さんです"

白いテキストエディタの画面、黒い角ゴシック系のフォントでそう打ち込まれていた。思わず谷地はつきつけられた画面と編入生を交互に見る。顔を真っ赤にして俯いている編入生を見てまたしても谷地は逆に落ち着いた。しかしこれはどえらい事情である。これ以上声に出して話すのははばかられた。ハッとした谷地は鞄をゴソゴソしてルーズリーフを取り出し、他から見られないようにその上に覆いかぶさってシャーペンでシャシャッと書く。書いたルーズリーフを折りたたんで隣の編入生に渡した。編入生は意図を汲みとったかやはり他からなるべく見られないようにそっとそれを開き、自分もシャーペンでその後に何か書いてからたたみ直して谷地によこす。とりあえずのやり取りはこんな具合だった。

"事情聞いてもいい?"
"親→生まれた頃からいない(亡くなった)、ばあちゃん→育ててくれたけど亡くなった、縁下さんち→お母さんのお友達だった、引き取ってくれた 名前→薬丸から縁下になった ←今ココ"

少ない言葉で語られる想像以上に重い事情に谷地はまた何てことっそんな波乱万丈な人生の人が世の中にいるなんてえええと思う。

"凄い人生だね"
"全然、ラッキーだよ 皆優しい 特にお兄さん"
"縁下さんはいい人だよ 部活でも"
"わかる気がする でもなかなか喋れない 仲良くなれるかな"
"きっと大丈夫だよ"
"谷地さんも優しいね"

ここで谷地は思わず縁下美沙の方を見てとんでもないっとブンブン首を振った。しかし縁下美沙はここで初めて笑顔を見せる。そして谷地は勇気を持ってこう書いた。

"美沙さんって呼んでいい?"
"おk 苗字じゃお兄さんとかぶるしね"

そうして2人は休み時間が終わるまで古典的な筆談を続けていた。
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