第6章 手を伸ばして2*グリムジョー
それは、普段から行いが悪いグリムジョーを敢えて狙ったということ。
悲しい事実に胸を痛める。
グリムジョーは何でもないように言うが、私には耐えられなかった。
「お前も俺に肩入れするのはやめろ。目ぇつけられたら終わりだぞ。」
“お前には関係ない”と、突き放されていると捉えられる言い方だけど、私の身を案じているようにも思えた。
でも私は…初めてグリムジョーと出会った時から心は決まっていたのかもしれない。
『不器用なこの人を分かってあげられる人になりたい』
再びベットに体を預けたグリムジョーの側へと足が赴く。
私の予想外な行動に驚く彼へ抱く感情は、恐怖でも悲しみでもなかった。
「私…グリムジョーのそばに居たい。」
「…は?テメー…何言ってんのかわかってんのか?」
「わかってる。だから、あなたの力になりたい…私じゃ役不足だろうけど、それでも…!」
必死に言葉を繋げると、グリムジョーがバッと起き上がって私の顔を覗き込む。
「…正気の沙汰とは思えねぇ…自分が危険に晒されるんだ。バカとしか」
「バカでいい。いや、元からバカなの!だから…お願い…!」
涙でグリムジョーの顔がぼやける。
彼がどんな表情をしているのか見えないけど、そんな私を慰めるように大きな手が頭に乗った。
「泣くんじゃねえ。更にブスだぞ。」
「うっ…知ってます…」
大きくて温かくて…凶暴だけど優しい手だった。
一大決心をした私を慰めるように、彼はずっと私の頭を撫でてくれた。
その日から…私の人生が走り出した。