第2章 好きなのに*六道恭平
息が苦しくなる程強くれんと抱きしめ合って、いいムードになった時、ズボンのポケットに入れていた携帯が鳴った。
「出ないんですか?」
「…ち。」
折角の雰囲気を壊されて少々苛立ちながら携帯を取り出し、画面を見ると立川あゆの文字が。
それをれんに見られていたなんて全く気にせず、部屋から出ながら通話ボタンを押した。
『こんばんは。お話したパーティーの予定が決まったのでお伝えしようと思って。』
「ずいぶん早かったな。で、いつなんだ?」
『来週の日曜日の14時からよ。他の人も連れてきてくれたら嬉しいわ。』
(来週の日曜日か。丁度空いてる日だな…メンバーも誘うか。)
「わかった。」
『じゃあね。』
たったそれだけの短い会話で通話を切り、再びれんの部屋に戻ると、ベッドの端に座って俯いているれんが待っていた。
れんの心中で何を思っているのか知らない俺は、構わずその華奢な肩に手を伸ばした。
「あの、恭平さん…今日はもう疲れてますよね?部屋でゆっくり休んだらどうですか?」
「は?今日は待ちに待った夜なんだ。簡単に引き下がれねーな。」
「えと…歌詞書かなくちゃいけないので…。」
(妙に回りくどいな…こういう時は大体…)
「何かあったのか?」
顎を持ち上げてこちらを向かせる。すると案の定俺の目を見ようとしない。
「何もありません…。」