第2章 好きなのに*六道恭平
無事ラジオのレコーディングを済ませ、タクシーで真っ直ぐれんが待つ専用スタジオに戻り、リビングを突っ切って彼女が居るであろう部屋のドアを開けた。
「へ!?あ、恭平さん!」
「悪いな集中してたのに。」
「ふふっ、本心で言ってないですよね。」
その通り、俺は全く悪いと思わずに部屋へ侵入。
そんな俺でも彼女は嬉しそうに作詞の手を止めて俺にトコトコと近づいて来る。
(本当こいつ山田さんに似てるんだよな…。)
「恭平さんお疲れ様でしっ…わっ!」
れんの腕を掴んで引き寄せ、力いっぱい抱きしめる。
突然の事に体を強ばらせながらもおずおずと手を俺の背中に回し、ついには俺の胸に顔を埋めて抱きしめ返してくるから、可愛いったら仕方ない。
俺もれんも一言も話さなかったが、お互いの体温を分け合うだけで十分気持ちは伝わる。
(全く…俺も一人の女に執着するようになったもんだな…。)
お風呂上りでまだ乾ききっていない甘い香りのする髪に口付け、顎に添えた手で上を向かせて唇を奪った。
「ん…っ」
「れん…ずっとこうしたかった。」
「そう言えば最近会ってませんでしたね。」
「その様子だと寂しくなかったみたいだな。」
「えっ!そんなことないですよ…だって…作詞、あまり進まなかったし…。」
ボソボソと伏し目がちに喋るれんの言葉は俺が望んでいた通りのもので。どんどんれんが俺に染まっていくみたいで嬉しかった。