第6章 手を伸ばして2*グリムジョー
「はぁ?お前さっき『ありがとうございます』って言ってただろ。」
一度優しくされただけでまだ恐怖心がある私は、グリムジョーの物言いに怯む。
「そ、そう、ですね…はは…し、失礼し、ました…」
お礼を言うんじゃなかったのか私!
と心の中で声を荒らげるも逃げ足は速かった。
2メートル先の角を曲がればグリムジョーの視界から外れる。
私は一心不乱にその角を目指していた。
しかし、
「おい」
「はいぃ!!」
丁度曲がり角に差し掛かった所で、後ろから呼び止められる。
咄嗟に足を止め、振り向くと、青筋が浮き出たグリムジョーに睨まれていた。
ズボンのポッケに両手を突っ込み、尊大な出で立ちで私に「こっち来い」と言う。
「は、はい…」
正直、ここに足を運んだのは自分だが関わりたくない。
お礼を一言言うだけだったのに…お礼を言うどころか怯んで逃げたのだが。
「…テメェ、さっさと歩けねぇのか?」
ノッソリ歩く私にイラつき、グリムジョーは更に周りの空気を険悪にする。
「すみません!」
私は意を決して小走りでグリムジョーの元へ行き、俯いてビクビクしながら言葉を待った。
「さっきの資料、ザエルアポロのやつか。」
「はい…」
「…チッ…あの野郎…」
(え?え?私のせいでザエルアポロがとばっちり!?)
嫌だ!それだけは勘弁して下さい!
って言おうと慌てていると、グリムジョーが怒ったような顔で口を開く。