第6章 手を伸ばして2*グリムジョー
呆然とその様子を眺めていた私は、グリムジョーが資料を全て拾い終わるまで全く動けなかった。
それ程、私にとっては衝撃だった。
「…おい、いつまでそうしてんだ。」
「あ…」
私の手を引っ張って立ち上がらせ、資料を差し出す。
「ありがとう…ございます…」
恐る恐るそれを受け取ると、グリムジョーはさっさとその場から居なくなった。
(イメージと全然違う…って、早く行かないと怒られる!)
ハッとした私はザエルアポロの元へ走った。
その後ザエルアポロに遅いだの何だの文句を言われたが、私は完全に無視してグリムジョーを探しに出た。
さっきの出来事について、ちゃんとお礼を言わないと不機嫌にさせてしまうかもしれない。
私はそう思い、グリムジョーが居るはずの部屋まで来た。
数回、扉をノックして返事を待つが、中からは何も聞こえず静かなまま。
「いないのかな…」
私は落胆して、ひっそりとその場から立ち去ろうとした。
その時、背後から突然、「おい」と声をかけられ、私は驚きで肩をすくませて振り返った。
「俺の部屋の前で何やってんだ。」
ふてぶてしい顔をしたその人は、怪しいぞとばかりに私を睨む。
「い、いや、あの、さっき、資料を拾ってくれたこと、お礼しなきゃと思って…」