第5章 剣の舞*坂田銀時、土方十四郎
(…あれ?)
れんは銀時とのやり取りをまた思い出す。
『だからあのジジイ…』
今日は忙しくなるから仕事に来て欲しい。とホテルのオーナーに依頼を受けたと言っていた。
れんの中に違和感が生まれる。
(まさか…知ってた…?)
ホテルのオーナーは、今日が突撃する日だと知っていたのではないか?
それでもしオーナーが組織の一員なら…
思考を巡らせている内に先頭は扉を開けて中へ突入する。
(あ…!)
中に入った瞬間、敵が武器を構えていて一斉に…
そんな地獄のような絵はれんの頭の中だけで終わり、目の前に広がるのは、誰もいないアジトに足を踏み入れている隊員の姿だけだった。
「…いない…のか?」
ザワつく隊員達に混じって十四郎が呟く。
積まれたダンボールが散財していて、いかにも物置き部屋という感じのアジトだ。
突入隊が部屋を見渡しながら外の隊員と無線で話す。
外で待機しているれん達も静かに固唾を飲んでいた。
「何か怪しい動きはないのか?」
スピーカーから外の隊員の「ありません」という声が漏れる。
何がどうなっているのか、れんは眼光を鋭くして部屋の端から端へ目線を移動させる。
その時、ダンボールの隙間で何かが光った。
「伏せろ!」
同じくその何かに気づいた局長が声を張り上げる。
それを合図に、部屋に積み重ねられたダンボールから容赦なく銃弾が飛んできた。
敵は居なかったんじゃない。隠れていたのだ。