第5章 剣の舞*坂田銀時、土方十四郎
組織の活動時間は主に深夜。
朝から昼にかけては交代制で監視役を置き、殆どの人が寝ている。
今回はその時間帯を狙う。
万事屋を出て、真選組の道場で突撃チームと最後の確認をし合う。
真剣な面持ちで皆が近藤勲の話に耳を傾けていた。
「いいかお前ら、相手が必ず寝ているとは限らない。何が起こるかはその時にしかわからん。絶対に気を抜くな。」
「はい!」
一切暗い影のない隊員達の声が自信をもたらす。
誰もが無事に帰れる。れんはそう確信した。
部屋から散っていく人々に混ざろうと、れんも畳から立ち上がった瞬間、何者かに肩を叩かれる。
れんの予想は大体ついていた。
きっといつものように、十四郎がどうでもいい話を吹っ掛けて来るんだろうと。
「おいれん。お前は俺の車に乗れ。」
話しかけてきた相手はビンゴだった。
しかし内容は全くどうでも良くなかった。
「え、副隊長、私はいつもの班の人と…。」
「ダメだ。今回追っているのは催淫剤の組織。変な気になった奴がお前を襲う可能性がある。俺のところにしとけ。」
もっともだ。言っていることは確かにもっともだ。
しかしどうだ、「変な気になった奴」とはれんからすれば、十四郎こそがその体現者ではないか。
信用出来ない訳では無いが、れんは苦い顔をして十四郎の言葉に頷いた。
(反対すると更に面倒くさくなるしね…ここは言う事聞いておいた方が自分のため…)
運転席に局長、助手席に副長、後ろに総悟とれん。
真選組のトップ3が一つの車に乗っているのは何も問題は無いが、そこにただの女隊員が居ることがとてつもなく奇妙だ。
「おい何でテメーがすましたツラして乗ってるんでい。」
(こいつ目が腐ってんのか私のどこがすましてるって?)
少々口が…心の声が汚くなってしまう程れんは不機嫌だった。