第5章 剣の舞*坂田銀時、土方十四郎
「襲われても返り討ちにできるから心配はしてねぇが、下でドンチャンやられると気が散るな。」
「気が散るって、銀さんそれほど仕事に集中しないですよね。」
「バッキャロー。俺がいつ仕事に命かけなかったんだよ。」
今まで散々仕事場で暴れてきた人が何を言うか。
れんはそんなことを思いながら、何度も読み返して頭に叩き込んだ突入ルート、フォーメーションを頭の中で復習する。
(それにしても…まさか催淫剤がこんな大事に…。)
その組織が販売している催淫剤には、麻薬並みの中毒性があり、とても強力なため、性行為による被害が異常に増えているのだ。
匂いを嗅ぐタイプの物なので、使った部屋の窓や換気扇から外に出たのを嗅いで…というのが多いらしい。
一度真選組の会議でその催淫剤について説明を受けたが、まだ処女のれんには刺激が強過ぎた。
(真顔でガンガン用語を言われて、こっちが恥ずかしかったよ…。)
真選組の紅一点ということもあり、男性陣がれんを変に意識していたことも何となく気付いていた。
しかし、何はともあれ突撃するのにそんな事は関係ない。
(相手はかなりの資金力があって、武器も警察組織とほぼ同レベル。気を付けないと…!)
無意識の内に顔がこわばり、テーブルの下で拳をキツく握り締めた。
「…あのぉ〜、ツッコミは無しですか。」
「へ、あ…何話してましたっけ?」
「…いや、何も話してなかったな。」
これは無理だと思った銀時は、話を蒸し返すのを諦めた。
本当に何も話していなかったかのような様子のれんは、時計をチラッと見やり、椅子から立ち上がった。