第3章 気付くのはいつも突然*黄瀬涼太
とりあえずソファーに座ってもらい、れんはお茶をコップに注いでテーブルに置いた。
「急に来たからビックリしちゃった。」
「れんさん、思ったより元気そうッスね。」
妙に重く低いトーンで言われた台詞。
れんは雰囲気に押し潰されそうになる。
「黄瀬君…?」
「…俺、今日まで悩んだことがあるんス。なかなか答えが見つからなくて…だから、思い切って言いに来たッス。」
(何か悪い知らせじゃないと良いんだけど…。)
れんは怖気づきながらも黄瀬の言葉を待った。
「俺は、れんさんが好きッス。付き合って欲しいッス。」
予想外の告白に心臓が煩い程音を立てる。
これは夢なのかも知れない。
(い、痛い…。)
自分の頬をつねると、確かに痛みを感じた。
「私、でいいの?」
れんは自分でも声が震えているのがわかる。
「れんさんじゃないとダメッス。」
「私も、黄瀬君が好き…へっ!?」
好き、の二文字を聴いた黄瀬は、あまりの嬉しさにれんを抱き締めた。段々腕の力が強くなっていく中で、黄瀬の胸にピタッとくっついたれんの耳に、黄瀬の心臓が高ぶる音が聴こえた。
(男の人もドキドキするんだ…。)
抱き締められていた腕を解かれると、頬に手を添えられる。
二人の視線が絡み合い、いつの日かこうして見つめ合ったことを思い出した。
黄瀬の顔がゆっくりと近付いてきて、れんは目を閉じる。
掠めるようなキスを繰り返し、徐々に深まり角度を変えながら溶け合う。
「マネージャーが小泉さんに変わってから、 ようやく分かったんスよ。俺が本当に側に居て欲しいのはれんさんだって。」
「私も黄瀬君の近くに居れなくて、寂しかったの…」
「れんさん…俺の事は涼太でいいッス。」
「え、じゃあ、私も呼び捨てでいいよ。」