第3章 気付くのはいつも突然*黄瀬涼太
早くも次の日からマネージャーが交代し、れんも黄瀬も新しい日常を歩み始めた。
「初めまして、水原柚木です!まだまだ分からない事が多いので、色々教えて下さい!」
ショートヘアで可愛らしい笑顔。
芸能人になるには充分オーラも華もある子だった。
(流石19歳…初々しくていいなぁ〜。)
「うん。私もまだマネージャー歴は浅いけど、一緒に仕事頑張ろうね。」
「はい!」
とは言ったものの、心の中では黄瀬のことをずっと気にかけていた。
まだ水原は新入りのため、名前を売るために雑誌やモデルの仕事を中心に、あちこち全国を巡って活動した。
「黄瀬君じゃなくなって、心配していたけど案外大丈夫かも。」
オフの日の前夜、録画しておいたドラマを鑑賞していると、画面の中でずっとすれ違っていた男女が、お互いの気持ちを伝え合って抱き合うシーンが映る。
(…。)
無意識の内に自分と黄瀬がそうなっている妄想が広がる。
「いいなぁ…私も黄瀬君に好きだって言えたらなぁ…。」
ポーっとしばらく妄想に浸っていた時、20時だというのに家のチャイムが鳴った。
「え?誰…?」
恐る恐るインターホンから誰かを確かめて、れんは唖然とした。マスクをしていたが、すぐに分かった。
さっきまで妄想していた相手が、ドアの前に立っている。
れんは戸惑いながらもテレビを消して、ドアを開けた。
「黄瀬君?どうしたの?」
「れんさん…突然ごめんなさいッス。俺、言わなきゃいけないことがあるッス。」
「えと、とにかく入って。」