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【短編集】ILY【R18】

第3章 気付くのはいつも突然*黄瀬涼太


「もうすぐ閉園の時間だし、最後は観覧車に乗ろう。」

ジェットコースターや様々なアトラクションで散々叫んだ後、黄瀬が最後にと提案する。

「うん。」

二人で観覧車に乗るのは初めてだった。
完全な密室に、れんは変に意識してしまってずっと外を見つめる。

「…れんさん。」

「な、何?」

「元気、出たッスか?」

(もしかして、心配してくれてここに連れてきてくれたの?)

「俺、こんなことしかできないし、あまり頼りにならないかもッスけど、れんさんは笑顔の方が可愛いッスよ!」

「!?…へ、あ、ありがとう…。」

優しい目で、優しい声でれんを本気で励まそうとしているのに気付き、れんはようやく自分の心の声が聴こえた気がした。

(私…黄瀬君が好きなんだ。)

思えば黄瀬はいつも優しかった。
一ヶ月前にあのことがあってから、急変した二人の関係。
そして気付いた恋心。
このままでいいのか、このままじゃダメなのか。

壁を乗り越えた先にまた新しい壁が。
どうしたらいいのかわからず、れんは黄瀬を見つめた。

「…黄瀬君…私…。」

「…?どうかしたッスか?」

(…言えるわけないよ…。マネージャーだもん…!)

好き。その一言を言えば、終ってしまう。
れんは何故かそう感じた。伝えたいのに、わからない。
黄瀬を見つめるれんの瞳が涙で溢れた。

「え、えっ!?れんさん…!?」

突然泣き出したれんに驚いて、咄嗟に自分のハンカチをれんの頬に当てた。

「あ、ごめん…!」

「俺は構わないッスけど…。」

また落ち込んだれんから、何とか理由を聞き出そう。
決意した黄瀬は、れんの頬を両手で包み、自分の目を見させる。

「言って欲しいッス。」

黄瀬とれんは見つめ合ったまま、動かなかった。
お互いがお互いの目に吸い込まれたように、時が止まる。

「お客さん。時間なんで降りてください。」

「…あ。」
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