第3章 気付くのはいつも突然*黄瀬涼太
「もうすぐ閉園の時間だし、最後は観覧車に乗ろう。」
ジェットコースターや様々なアトラクションで散々叫んだ後、黄瀬が最後にと提案する。
「うん。」
二人で観覧車に乗るのは初めてだった。
完全な密室に、れんは変に意識してしまってずっと外を見つめる。
「…れんさん。」
「な、何?」
「元気、出たッスか?」
(もしかして、心配してくれてここに連れてきてくれたの?)
「俺、こんなことしかできないし、あまり頼りにならないかもッスけど、れんさんは笑顔の方が可愛いッスよ!」
「!?…へ、あ、ありがとう…。」
優しい目で、優しい声でれんを本気で励まそうとしているのに気付き、れんはようやく自分の心の声が聴こえた気がした。
(私…黄瀬君が好きなんだ。)
思えば黄瀬はいつも優しかった。
一ヶ月前にあのことがあってから、急変した二人の関係。
そして気付いた恋心。
このままでいいのか、このままじゃダメなのか。
壁を乗り越えた先にまた新しい壁が。
どうしたらいいのかわからず、れんは黄瀬を見つめた。
「…黄瀬君…私…。」
「…?どうかしたッスか?」
(…言えるわけないよ…。マネージャーだもん…!)
好き。その一言を言えば、終ってしまう。
れんは何故かそう感じた。伝えたいのに、わからない。
黄瀬を見つめるれんの瞳が涙で溢れた。
「え、えっ!?れんさん…!?」
突然泣き出したれんに驚いて、咄嗟に自分のハンカチをれんの頬に当てた。
「あ、ごめん…!」
「俺は構わないッスけど…。」
また落ち込んだれんから、何とか理由を聞き出そう。
決意した黄瀬は、れんの頬を両手で包み、自分の目を見させる。
「言って欲しいッス。」
黄瀬とれんは見つめ合ったまま、動かなかった。
お互いがお互いの目に吸い込まれたように、時が止まる。
「お客さん。時間なんで降りてください。」
「…あ。」