第3章 気付くのはいつも突然*黄瀬涼太
れんに笑顔を向ける黄瀬。笑顔の黄瀬。笑顔の黄瀬…れんの頭の中は楽しそうな黄瀬の姿でいっぱいだった。
まるで頭の中の黄瀬がれんに話しかけているような、そんな妄想だった。
(本当に私重症だわ…。もう!)
突然項垂れたれんに驚いた黄瀬が声をかける。
「ロケの後も聞いたけど大丈夫ッスか?具合悪いとか。」
「わからない。」
「わからないって…。」
暗い顔でぼんやりと窓の外を眺めるれんが、どうしても気になる黄瀬。
二年間も二人一緒に支え合って芸能界を生きてきた。
戦友とも呼べる存在が、元気をなくしているのなら自分が何とかしよう。その一心で、黄瀬は遊園地にれんを連れてきた。
「何で遊園地…?」
「遊園地は誰もが楽しめる場所ッスから。ほら、行くッスよ!」
帽子を深く被った黄瀬がれんの手を引っ張り、ゲートを通って早速この遊園地で一番人気のジェットコースターの列に並ぶ。
「れんさんジェットコースター乗れるよね?」
人が多い所では、黄瀬は「ッス」を使わないようにしている。
金髪にピアスに大きな図体。それだけでも目立つのに、「ッス」なんて使われると一瞬でバレてしまうからだ。
「うん。かなりビビっちゃう方だけどね。」
夜の遊園地は思ったよりも人が少なく、並び始めてすぐにジェットコースターに乗り込めた。
「登る時って凄い緊張するんだよね…。」
落ち着かないようにモジモジするれん。
「それ分かる。落ちてからだと楽しいけど…。」
ガタガタ
頂上の近くまで来た時、周りを見渡してみると東京の街が光で華やかに輝いていた。
「綺麗だなぁ…。」
ポツリと呟いたれんの顔には、さっきまであった暗い影がすっかり消えていた。