第3章 気付くのはいつも突然*黄瀬涼太
「あ、早く着替えないと、収録が…」
「収録なら終わったッスよ?やっぱりいつもより変ッスよ。大丈夫ッスか?」
「終わった…!?ダメだ私どうしよう…。大丈夫じゃないのかな?」
質問を質問で返されて、一時困惑する黄瀬。
「俺に聞かれても…でも様子がおかしいのは見てたらすぐ分かるッス。」
「嘘…!」
「こんな時に嘘なんかつかないッスよ。ほら、早く帰りましょうッス。」
「う、うん。」
車に乗り込む前まで黄瀬はれんの様子を伺っていたが、どうも今日は身が入っていないようだった。
いや、楽屋でフェラチオをしてもらってからか…と色々考えている自分に黄瀬自身も驚いた。
どうしてずっとれんのことを考えているのか。
隣を歩く抜け殻のようなれんをチラ見する。
こんな色の無い顔をさせ続けたくない。笑顔でいて欲しい。
少しの間考えた結果、黄瀬はれんをある場所に連れていこうと決めた。
「ごめんね、運転までさせちゃって…。」
「気にしなくていいッス。俺も久しぶりのドライブで楽しいッスから。」
橙の空が暗い青に染まっていく。
景色が流れる助手席の窓は、高速道路の照明を永遠と映すばかり。
(どこに行くのかな?)
帰り道の方向が違うことにはとっくの前から気付いていた。
しかし、運転席の黄瀬は一度も目を泳がせることなく前だけを見つめていた。だかられんは任せてみようと思ったのだ。
いや、止める気すら起きなかったの間違いか。
「もうちょっとかかるかも知れないッスから、寝てていいッスよ。」
「うん、わかった。」
黄瀬の言葉通り、れんは目を閉じてみる。
流石にすぐに眠りに落ちることは不可能で、れんは今頭の中を埋め尽くしている存在を浮かべた。