第17章 【夜シリーズ】イロコイ【緑谷出久】
「永久指名になると、君との時間も料金が発生しちゃうけど…いいの?」
『うん。いいよ。出久のためだもん。』
携帯越しに聴こえるれんの声は、迷いが一切なく澄み切っていた。
翌日の午後に永久指名へ変更という答えを出した彼女は、今日は来ない代わりに緑谷へ電話を掛けたのだ。
「…そう。ありがとう…僕を選んでくれて。」
緑谷がれんと会話を終わらせて携帯を仕舞うと、すぐ隣にいた峰田がをじっと彼を見つめていた。
何かと思って緑谷も見つめ返すと、峰田はニヤッと歪んだ笑顔で彼に話しかけた。
「また純粋な乙女を仕留めたのか?『君との時間も料金が発生しちゃうけど』なんて嘘ついちゃってよ~…選ばれたんじゃなくて選ばせたくせに。」
峰田の発言に狼狽えるでもなく、緑谷は飄々とした面持ちで静かに笑う。
その顔には一切の感情も窺えず、ただ涼しげな雰囲気だけを湛えていた。
「確かに嘘は混じってるかもだけど、僕はホストだ。何もかもお金で買ってもらわなきゃ。そのための作戦を実行したまでだよ。」
「うわ~…お前ほんと陰気くせぇぞ。」
「何とでも言いなよ。僕は僕のやり方で一位になるだけだ。」
数いるホストの中で、緑谷出久がNO.3の座に居られる理由…
それは、永久指名による指名数の多さだった。