第17章 【夜シリーズ】イロコイ【緑谷出久】
「今日も来てくれて嬉しかったよ…ありがとう。」
「いえ、私こそ、出久と話せてすごく楽しかった。」
あの夜から数週間。
私はちょこちょこyuueiに通うようになり、ちょこちょこお金を使うようになった。
出久に会いたい。
出久と話をしたい一心で。
彼は心の癒しだった。
「れんさん、最近綺麗になったよね?化粧とかも変わって…僕、今のれんさん好きだな…」
「ホント…?嬉しい。」
出久の言う事はなぜかお世辞に聞こえなくて、小さな変化にも気が付いてくれた喜びに胸を躍らせる。
「れんさん…」
太陽のような笑顔が迫り、目を閉じれば唇に感じる優しい熱。
柔らかな感触を暫く堪能していると、隙間から割り込んで来た舌が私の歯列をなぞった。
情熱が絡み合い、後頭部に回された出久の手が私の髪をそっと撫でる。
舌先で口蓋をチロリと刺激され、体から力が抜けて膝を折ってしまったが、彼の腕が私を支えてくれた。
「久しぶりだから、ちょっと緊張してるかも。」
「あ……」
少し照れくさそうに笑い、出久が私を押し倒す。
反発性の小さいマットレスが私の背中を受け止め、淡いオレンジ色の光が照らす天井を見上げる。
(あの日と同じ天井だ……)
いつの日か、思い出すのは名刺の裏に書かれていた文章。