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【短編集】ILY【R18】

第17章 【夜シリーズ】イロコイ【緑谷出久】


もう帰ろうかなってバックを手繰り寄せた時、私は何故かNO.3ホストに声をかけられた。

「あの…もしかして、一人?」

「え、はい…あなたは…緑谷出久…?」

「知ってくれてるんだ、嬉しいな。」

もっさりとした緑色の髪の毛、頬のそばかす…yuueiの入口付近に飾られている写真で見た、地味めなホスト。

華が無さすぎて寧ろ名前を憶えてしまったぐらい、NO.3のイメージとは程遠い人だ。

彼は私に人当たりの良い笑顔を向け、少し緑がかった黒いスーツを正しながら、謙虚な態度で私の隣に腰掛けた。

巻くのが下手くそなのかは知らないが、やたらと短くなった赤いネクタイに注目してしまう。

「もしかして、帰るとこだった?」

「いえ…」

「そっか。じゃあ、僕とお話しない?」

「いや、結構です…。私……」

私、つまんない女ですから…そう言いかけた口を閉じる。
言った所でどうにもならないし、相手を困らせるだけだから。

言葉を噛み殺した私の顔を覗き込み、緑谷さんは心配そうに眉を顰めた。

「何か嫌なことでもあったの?僕、時間があるから聞くよ…?」

「そ、そんな…だって、お仕事中じゃ…」

「気にしないで。それに、困ってる女の子を放っておけないよ。」
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