第17章 【夜シリーズ】イロコイ【緑谷出久】
もう帰ろうかなってバックを手繰り寄せた時、私は何故かNO.3ホストに声をかけられた。
「あの…もしかして、一人?」
「え、はい…あなたは…緑谷出久…?」
「知ってくれてるんだ、嬉しいな。」
もっさりとした緑色の髪の毛、頬のそばかす…yuueiの入口付近に飾られている写真で見た、地味めなホスト。
華が無さすぎて寧ろ名前を憶えてしまったぐらい、NO.3のイメージとは程遠い人だ。
彼は私に人当たりの良い笑顔を向け、少し緑がかった黒いスーツを正しながら、謙虚な態度で私の隣に腰掛けた。
巻くのが下手くそなのかは知らないが、やたらと短くなった赤いネクタイに注目してしまう。
「もしかして、帰るとこだった?」
「いえ…」
「そっか。じゃあ、僕とお話しない?」
「いや、結構です…。私……」
私、つまんない女ですから…そう言いかけた口を閉じる。
言った所でどうにもならないし、相手を困らせるだけだから。
言葉を噛み殺した私の顔を覗き込み、緑谷さんは心配そうに眉を顰めた。
「何か嫌なことでもあったの?僕、時間があるから聞くよ…?」
「そ、そんな…だって、お仕事中じゃ…」
「気にしないで。それに、困ってる女の子を放っておけないよ。」