第2章 好きなのに*六道恭平
「私、恭平さんが立川さんと話しているところを聞いてしまって…というか見てしまって…。」
俺はこの時、すべてを悟ったように思えた。
(まさかそれで勘違いして?)
「わ、私は…恭平さんが本命を見つけるための」
「ちょっと待て!何か誤解してるだろ。」
思った通り、れんは立川と俺との会話の一部を聞いて誤解したんだ。
「いいか、今の俺はお前しか見えてないしこの先も俺が好きなのはお前だけだ。どこまで会話を聞いたのかは知らねぇが、あいつが一方的に俺と付き合えって言ってきたから俺はちゃんと断ったぜ。」
俺はれんの誤解を解こうと話すと、れんはキョトンとした目で俺を見て固まる。
「…へ?じゃあ、立川さんと恭平さんは付き合わ」
「ない。」
「あの会話は立川さんが恭平さんを」
「口説いてただけだな。そんで俺は立川を振った。」
「…なんだ…はは…心配して損しちゃった…。」
涙を浮かべて安心したように笑うれんの頬に手を添えて、キスを贈る。すると突然、れんがハッとした顔で口を開いた。
「あ、でも…恭平さんと立川さんって、付き合って、たんですよね…?」
俺は正直狼狽えた。あのことをれんに話して良いのか。
でもかけられた疑いは晴らさなければ、ずっとれんが悲しむことになる。
「付き合っては…ない。ただ二年前に一度だけ、抱いた事はある。」
真っ青になっていくれんの顔を見て、俺は更に焦る。
「でもそれっきりだ。お前に会う前の俺は、今と違って大切な人以外でも抱けた。だから…。」
もう伝えたいことがごちゃごちゃで、頭が白くなった時。
「ふふふ…もういいですよ。恭平さんの気持ち、わかりましたから。」