第2章 好きなのに*六道恭平
「こんなに勃たせといて嫌とは、素直に欲しいって言ったらどうだ?」
窓から入る夕方の陽の光でハッキリと影を落とし、下着を押し上げて自身を主張する双丘の頂には触れず、その周りをスーっと円を描くようになぞる。
「ん、んぁう…」
れんは快感に素直だ。
感度のいいカラダだから、耳が痺れるような声で啼いてくれる。
「どうして欲しいか言ってみろよ?」
今までなら女の喘ぎ声なんて煩いものでしかないと思っていた。
俺に言い寄ってきた女や、今回のように業界の権力者にコネを作るためなら、と両手で持て余すようにいた女達をとっかえひっかえベッドに連れ込み、ただ快楽だけを貪っていた過去。
周りの人からは経験豊富だと思われているが、
俺が今まで経験したのはただ形だけの、そこに愛のない行為だけ。
れんを抱いて初めて知った…愛してやまない人を腕に抱き、唇を合わせ、情熱を分かち合い、包まれ…溺れるという行為。
俺の世界をこんなにも変えてくれる人に出逢えた俺は、
世界中のどんな奴よりも幸せ者だって本気で思った。
「きょ…へ、さん…!ぁっ、お、ねがぃっ…!」
ようやく懇願され、俺はゾクゾクと湧き上がる支配感に頬が緩んだ。しかし、れんが発したのは快感を求めるものではなく…
「聞いて、ほしいの…」
思わずれんを愛撫していた手が止まる。
この一言でようやく俺は我に返った。
れんは別れようと言った。
そしてその理由を話そうとしてくれている。
「れん…今更になったが、話してくれるか?」
「…はい。」