第15章 セイレーン*リヴァイ
「へ?…えと…」
リヴァイの発言に動揺した私を見て、彼の眉がピクリと動く。
「今日はどうも様子がおかしい。何かあったんだろ。」
…もう、思い切って訊いてもいいだろうか…?
この際嘘をついても仕方がないと考えた私は、自身が最も危惧していた質問をする決意を固めた。
「どうして、リヴァイは私を抱くの…?」
「…抱く行為に深い理由が要るのか?ただ相手を求めて…それだけだろ。」
「そ、そっか…なら、リヴァイが私を選ぶ理由って、何?」
リヴァイは私の問いかけに暫し沈黙し、思いついたように私の髪に触れた。
指先にくるくると髪を巻きつけ、ゆっくり口を開く。
「…黒髪も良いなと思ったからだ。」
「…!」
まさにその時だった。
私が自らの愚かさを悔やみ、恨んだのは。
最初から分かってたじゃない…彼は住む世界が違う人で、私のような下衆な人間が恋焦がれるなど言語道断であると。
リヴァイの一言で全てを悟ると、目頭が熱くなって涙が溢れた。
「おい、どうした」と彼は私の頬へ手を伸ばすが、私はそれを払って首を横に振る。
違うの…放っておいて…
私の頭に浮かぶのは…いつか見た、調査兵団の制服を着た私と瓜二つの女性。
彼女の髪は、栗色だった。
そしてリヴァイは、黒髪“も”良いなと思ったからだ、と言った。
「…そうだったんだ……」
「シーナ?」
思った通りだった……
リヴァイの心の中に居るのは、その女性だったんだ…。
誰か一人を特別扱いできない環境に身を置くために、好意を寄せている人の姿を私に重ねて抱いていただけ…。
私がどれだけリヴァイに振り向いてもらおうと頑張っても、私自身に彼の心が向くことはないんだ。
「違うの…私の髪のこと、初めて褒められて…嬉しくて、」