第2章 好きなのに*六道恭平
ドアが開く音に身体を強ばらせ、俺の顔を見るれん。
明らかに泣き腫らした瞼が痛々しかった。
「な、んで…恭平さん…!?」
「れん…。」
何かを察した山田さんが心配そうに振り返りながら部屋を去っていく。俺は扉を閉め、ベッドに座るれんに近づいた。
「こ、来ないでくださいっ!」
そう言いながらベッドの上を滑るように後ずさる。
何かがプチンときた俺はれんの手首を掴み、顎に手を添えて俺の目を見させる。
「あ…離し…」
「お前、何があった。隠さずに言え。」
れんは口を堅く閉ざし、目だけそっぽを向く。
「俺に言えないことなのか?」
「…。」
またれんの目から涙が溢れ、震えて、何かを言おうと唇が動く。
「わ、たし…別れ、たいです…。」
「なっ…!」
俺はあまりにも唐突な言葉に思考が追いつかなかった。
別れたい?どうして急にそうなった。
「本心なのか?」
自分の声が驚くほどに掠れた。
れんはビクッと身体を震わせて、悔しいような悲しいような表情で頷いた。
(違う…こいつの本心なんかじゃねぇ。)
俺のどこかがそう確信した。
それに理由も聞かされないまま、最愛の人と別れるなんて、俺も考えられなかった。
それでも言葉で言っても通じない。
なら、こいつの気持ちを確かめるまでだ。
決心した俺はれんを抱き寄せ、唇を奪った。