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【短編集】ILY【R18】

第2章 好きなのに*六道恭平


俺が会場に戻ってからは、もうどこにもれんの姿を見つけることはできなかった。

「ミカン女なら知らないぞ。」

「いおりんってば、そんなこと言わないで探そうよー。」

「恭平、携帯で連絡はつかないの?」

「ああ…。電話しても繋がらねぇ。」

「どっか散歩してるんじゃないの?」

特に理由もなくれんが大事な場所から出ていく訳がない。
まさか事件に巻き込まれたんじゃ…と悪い方向にまで思考が及んだ時だった。

「何だったんだろうな?」

「あの女の子泣きながら走って、転けたりしないかしら…?」

俺の真後ろから聞こえてきた会話に、直感的に反応した。

「少し伺いたいのですが、その女性の格好は?」

突如として現れた俺に驚く熟年夫婦が、焦りながらその時の様子を教えてくれた。

「えーっと、確か薄い紫色のドレスを来てたわよね。」

「ああ。腕で目を覆いながら走ってたよ。」

「そうですか。ありがとうございます。」

(間違いねぇ…れんの奴、何があったんだ?)

考えても仕方ないことだとわかっていたが、もし俺が原因でれんを泣かせたなら追いかけなければ。

俺は情報を提供してくれた二人に頭を下げて、急いで会場を飛び出した。
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