第2章 好きなのに*六道恭平
夢主目線
「あ、あれ、そうですかすみません。」
私はプロデューサーに頭を下げて来た道を戻っる。
立川さんに言われてプロデューサーに話しかけたものの、「ん?そんなこと言ったかな?」と返されてしまい、何が起こったのかよくわからないまま引き下がることにしたのだった。
(何だったんだろう…それにしても恭平さん、どこ行ったんだろう?)
周りを見渡しても見当たらなくて、私は会場を出て廊下を散策した。
(あれ?誰かいるのかな?)
誰かが喋っている声がして、ドアが放たれたある一室を覗き込んだ。
(恭平さん!…と、立川さん?)
二人は隙間がないほど密着して、見つめあっている。
自分の心臓が嫌なくらい響いた。
「二年も前に一回そうなっただけだろ。」
「そんなにあっさりされちゃうと悲しいわね。私は今でもあの時のことを忘れてないのに。私達、カラダの相性良かったでしょ?」
(…へ?)
恭平さんと立川さんが、恋仲だった?
いや、私が恭平さんの彼女になる前に、別の彼女がいたってことは普通にありえる。
重くなる頭を抑えて息を殺す。
すると立川さんが愛おしそうに恭平さんの頬をなぞり、それに応えるように恭平さんが立川さんを見つめる。
「今の彼女はいつまでが期限なの?そろそろ私に乗り換えない?」
その言葉を聞いた瞬間、私の体は走り出していた。
熱くなる目頭を抑えて会場の外へ逃げた。
(私、恭平さんに捨てられちゃうんだ…!)
胸がズキズキと痛くて、私は出口を出た所でうずくまって泣いてしまった。