第10章 傷*ラクサス・ドレアー
れんは、幼少の時から俺がどれだけ威嚇しようとも、虚勢の壁を破壊していつも俺の隣に居座っていた。
不思議な奴だった。
特別明るい性格でもないのに、面白い。
クールなのに慌てる時は騒がしい。
俺の放浪生活を共にしたいと言って来た時も、なぜか嫌だと思う感情は湧かなかった。
「だから、子どもって思われたの、凄く嫌だった…ラクサスと並んでも、バカにされない人になれば済む話だと思うけど…」
最後はモゴモゴとして目を伏せてしまったが、俺には充分伝わった。
「そうか…オレはそんな悩み、必要ないと思ってるぜ。」
れんをベッドに押し倒し、覆い被さるように顔を覗き込んだ。
「…もうなってる。他が何言おうと、オレの隣に立てるのはれんだけだ。本人が言ってんだ、信じろ。」
数回瞬きをして涙を排出し、れんは喉の奥で笑った。
「王様みたいな物言いね。ほんと、ブレないの凄いわ。」
「お前こそ、状況わかっててその口ぶりはすげーと思うぜ。」
顔の両側に手を置かれ、上にのしかかられているのに…。
「っ!」
れんは指摘されてから気が付いたのか、唐突に赤く染まった顔を背けて俺の肩を押す。
今かよ…と若干呆れつつも、気持ちは穏やかだった。
「れん」
名前を呼ばれてチラッと俺の目を見たれんの手を掴み、頭の上でシーツに括り付けた。
両腕を高く上げた格好になったれんに、ひとつ、唇を重ねてみる。