第10章 傷*ラクサス・ドレアー
「んなことねーよ。知っての通り雑いぞ。」
あの時も確か、髪がうまく結べないと俺に助けを求めてきたんだっけか。
そう思うと、自分が案外解りやすい男なのだと口元が緩んだ。
「でも…」
「器用かどうかは相手によるな。」
「?」
首を傾げるれんの顔を見て、降りてきた言葉を素直に声に出した。
「れんのためだって思ったら、スイッチ入るんだよ。」
「へ…!?」
今まで聞いた事の無かった声を出し、れんが口を開けて固まる。
思い切ったことを口にしてしまったが、後悔は無かった。
みるみる顔を紅潮させるれんを見ていると、俺まで恥ずかしさに頬が熱を持った。
落ち着かない様子であちらこちらに首を振り、あわわわ…と口をパクパクさせるれんは、
「そ、それって、私が、子どもだからっ、って意味…だよねっ!」
と答えを俺に求めた。
俺の顔を見ようとしないれんの頬を両手で包み、視線を合わせる。
「…オレは、れんが子どもだなんて思っちゃいねぇ。」
ピクッと肩を震わせて、れんが唇を噛む。
「ホントに…?」
(相当気にしてたようだな…根に持ちやすいのは昔からか。)
瞳に薄い幕が張ったれんの頭を撫でて、強く頷いてやった。
「嘘なんかつかねーよ。」
「ラクサス………私ね、」
ポツポツと、れんが俺の手に触れながら言葉を紡ぐ。
「ラクサスの隣に、堂々と立ちたかったの。一緒に旅を始めたきっかけも、それが理由で…」
バトル・オブ・フェアリーテイルでれんは俺側にいた訳ではない。向こう側にいた訳でもない。
それなのに、破門されてギルドを去ろうとした俺を追いかけてきたのだ。
ずっと不思議に思っていたことが明らかになると同時に、過去の思い出が蘇った。