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【短編集】ILY【R18】

第10章 傷*ラクサス・ドレアー


ぐはッ!
なんて強力な攻撃なんだ…!
俺は残りHP1になってしまったぞ。

れんの顔から下に視線を送ると、タオルを手で押さえて前が見えないようにしている。
…剥ぎたい。
その手を無理にでも退かし、れんを…。
欲望に逝きかけた頭をダメだダメだと振り、不純な衝動を払う。

「分かった。背中を拭けばいいんだな。」

「うん。」

扉の隙間から姿を消したれんの後を追い、踏み入れた洗面所はユニットバスだった。
れんは浴槽の淵に腰掛けて、俺に背中を向けている。
床には、固まった血が付着した包帯が束になって落ちていた。

(怪我は順調に治ってるみたいだな。)

「これ…」

「ああ。」

れんから温かく濡れたタオルを受け取って、小さく猫のように丸まった背を撫でるように拭く。

白くてすべすべしていて、柔らかい。
かすり傷には触らないよう、細心の注意を払った。
頭の中が勝手に盛り上がっているのを悟られないよう、丁寧に、ゆっくりと手を動かした。

「面倒かけて、ごめんね。」

「いや、かまわねぇ…俺こそ、突然断りも無く押し掛けて悪い。」

(役得だ…)

謝りながら不謹慎極まりない発言を心の中で繰り返す。
俺の中に潜む何かが猛威を振るっては困るので、変哲の無い壁に目線を集中させてその場はやりきった。

暫くして、ベッドに座る俺の元にれんが包帯を手にやって来た。
服に隠れた部分は自分で巻けたが、腕が難しいから、と俺に包帯を渡す。

「キツかったら言えよ。」

「ありがと。」

場所を入れ替えるように、れんが俺が居た所に座る。
俺は床に膝をついて、細長い傷が何本も走った華奢な腕を、微妙な力加減でスルスルと包帯で包んだ。

「流石ラクサス…!」

ラクサスって意外と器用なのね、と前にれんが言っていたのを思い出す。
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