第10章 傷*ラクサス・ドレアー
さっきまで居た郊外と違い、都心の市場は人でごった返していた。
包帯だらけという状態が気になるのか、すれ違う人々が食い入るようにれんを好奇の目で追う。
「…れん、」
俺はれんの腰を抱き寄せて、肩にも腕を回した。
なるべく露出している部分を隠すように。
「大丈夫なのに。」
「大丈夫じゃねぇだろ。大人しく隠されてろ。」
「過保護…。」
「るっせぇ。」
れんは本当に平然としていて、人々の目など気にもしていない様子だ。
でも俺は、れんがジロジロと見られることに苛立ちが募った。
(見世物じゃねーんだよ!)
やけに腹の底が騒がしく、周りの空気までピリピリさせてしまう。
俺は知らず知らずの内に威圧感を増していたらしい。
…それが不幸を呼んだのかもしれない。
ピピーッ!!
れんの服を購入した直後、俺達を呼び止めるようにホイッスルの音が市場に響いた。
「そこの二人!止まりなさい!」
(なんだ?)
二人で後ろを向くと、警察がゾロゾロと束になって俺にガンを飛ばしていた。
俺が何かしたのか?と記憶を巻き戻してみるが、心当たりは全く無い。
「大人しくしなさい!」
おいおい…大人しくしなさいって…俺達突っ立ってるだけで何もしてねーぜ?
れんに至っては、さっき買った上着のボタンを留めているだけだし。