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【短編集】ILY【R18】

第10章 傷*ラクサス・ドレアー


その後れんは順調に回復し、世話になっていた宿を出る日が来た。

「寒くないか?」

レトロな雰囲気のある郊外を歩きながら、隣にいるれんに尋ねた。
まだ暑さが残っているとはいえ、夜風は時に肌を冷たく刺すことがあるからだ。

それに、れんのワンピースから至る所に包帯が巻かれているのが見えるってのもある。

(オレがれんと一緒に戦っていれば…)

その痛々しい姿を見る度に胸が締め付けられ、考えないようにしていた後悔を掘り起こされてしまう。

「…ラクサス。」

れんは俺の顔をじっと眺めて、コクリと頷く。
そして俺に手を差し出した。

「眉間に皺寄ってる。」

「!」

思っていたことが顔に出てたのか…。
れんは案外鋭くて、きっと俺が何を思ってたのか解ったに違いない。
でも、れんは口にしない人だ。

「これ以上オジサン化したら取り返しつかない。」

俺はその様子に相変わらずだな、と笑ってれんと指を絡める。

「ありがと。」

「オレも…ありがとな。」

なんだか…ギュッと力を込めて俺の手を握るれんがすげぇ可愛くて、少し頬が熱くなった。

「上に着るもん買うか。」

「うん。」

照れている顔を見られないように少し前を歩き、俺達は人で賑わっている市場に向かった。
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