第10章 傷*ラクサス・ドレアー
その後れんは順調に回復し、世話になっていた宿を出る日が来た。
「寒くないか?」
レトロな雰囲気のある郊外を歩きながら、隣にいるれんに尋ねた。
まだ暑さが残っているとはいえ、夜風は時に肌を冷たく刺すことがあるからだ。
それに、れんのワンピースから至る所に包帯が巻かれているのが見えるってのもある。
(オレがれんと一緒に戦っていれば…)
その痛々しい姿を見る度に胸が締め付けられ、考えないようにしていた後悔を掘り起こされてしまう。
「…ラクサス。」
れんは俺の顔をじっと眺めて、コクリと頷く。
そして俺に手を差し出した。
「眉間に皺寄ってる。」
「!」
思っていたことが顔に出てたのか…。
れんは案外鋭くて、きっと俺が何を思ってたのか解ったに違いない。
でも、れんは口にしない人だ。
「これ以上オジサン化したら取り返しつかない。」
俺はその様子に相変わらずだな、と笑ってれんと指を絡める。
「ありがと。」
「オレも…ありがとな。」
なんだか…ギュッと力を込めて俺の手を握るれんがすげぇ可愛くて、少し頬が熱くなった。
「上に着るもん買うか。」
「うん。」
照れている顔を見られないように少し前を歩き、俺達は人で賑わっている市場に向かった。