第8章 わたしたち*緑谷出久、飯田天哉
一緒に困難を乗り越えて、幸せな日々を過ごしたのに…ごめんね天哉…私は…もう…
思考回路は消滅し、緑谷の声だけがれんの頼りだった。
「そうだ、陽月さん…飯田君とはどんな風に愛し合ってたの?見せて欲しいな…」
その声に電流が中枢神経系から体の末端へと走った。
動けない飯田のジーンズに手を掛け、ガチャガチャと金具を外し、下着と共に降ろす。
「待てれん…ぐっ!」
制止する声を振り切り、目の前に現れた肉棒をうっとりと見つめ、血管が浮き出た上側を先端から舐め上げる。
息を呑む飯田の顔を盗み見て、れんは記憶を手繰り寄せた。
(天哉が、好きなトコロ…)
裏側にある皮と亀頭の連結部分を舌先で刺激する。
はぁ、と漏れた溜息にれんが上を向けば、切なく伏せられた視線とぶつかった。
先走りを広げるように幹を扱くと、飯田の手が頭に乗せられる。
飯田はれんの髪を撫でる自分が信じられない様子だった。
緑谷とれんの浮気現場に居合わせたと思えば、今度は自分のモノがれんに扱かれているのだ。
もう訳が分からない。
平気な顔をしている緑谷も、正気を失ったれんも、こんな状況で感じている自分も。
何も考えられない、考えたくない…。
そんな異常な環境は、とうとう飯田の奥深くに眠る影を目覚めさせてしまった。
黒い塊は、一人にでも宿ってしまえば誰にも存在する脆い壁を破壊して、周囲の人間にも定着してしまうのだ。