第8章 わたしたち*緑谷出久、飯田天哉
静かな部屋に、携帯から漏れた飯田の声が重く沈む。
肌を撫でるシーツがやけに冷たく感じた。
「今、陽月さんと一緒に居るんだ…」
『どういうことだ…?』
「飯田君、陽月さんと話したいよね?」
『…ああ』
抑揚のない声でれんの耳元に携帯を持ってくると、「ほら、持って?」とれんを促した。
顔面蒼白で怯えるれんに、悪魔の微笑みが迫る。
放たれた言葉こそ柔らかいのに、底知れぬ恐怖を含んでいた。
自分の意思では到底動かない手が、操られたようにフラフラと携帯を掴む。
「て、天哉…」
『れん!?今どういう状況なんだ…!?』
「わ、私は…デク君と、仕事してて」
『本当なのか!?何故、そんなに動揺しているんだ…?まさか、』
「本当なの!まさか、掛けてくるなんて、思ってなかったから…!」
『…』
緑谷と飯田は高校の時から親友で、そんな人を疑うなんて…飯田は浮かんだ“最悪の事態”を振り払おうとした。
だが、伸ばされた毒牙に邪魔をされてしまう。
「飯田君…陽月さんの声、もっと聴きたいと思わない?」
緑谷がれんから携帯を取り上げ、スピーカーに切り替えるとベッドの脇に携帯をポイっと放る。
『緑谷君!いい加減に…!』
「あン、あ…やめっ」
れんの声を聞いて、部屋に木霊していた飯田の声がパタリと消える。
大きく脚を開かされ、腰を振り下ろされ…
れんの不意をつき、緑谷が嬉嬉として内壁を嬲ったせいで。