第8章 わたしたち*緑谷出久、飯田天哉
「もっと咥えて…くっ…」
陰茎に纒わり付く泡立った液を丁寧に舐めとっていると、床に落ちていたれんの携帯が着信を告げる。
「…!」
「…僕が取るよ。」
手が離せないれんの代わりにベッドの下から携帯を拾い上げ、画面に表示された文字を見て緑谷が目を見張る。
「飯田君だ…」
「!…どうし、」
緑谷は思わず愛撫を中断したれんを見やり、何かを思慮するように黙り込む。
(いつもなら、仕事をしてる時間帯なのに…!)
今度はサーッと体温が下がり、緊張した汗が額や背中を伝う。
「静かに…」
緑谷は固まったれんの頭を撫で、肩を押してベッドに寝かせた。
(何を…?)
見上げた緑谷の口角が不気味に吊り上がる。
いつも輝いていた瞳は曇っているように感じた。
良くないことがれんの頭をよぎる。
それは現実となり、緑谷はスマホを操作して耳に当てると、あろう事か飯田と通話を始めた。
(うそ!?待って、…!)
「飯田君…久しぶりだね。」
「デク君 …!?」
「しー。」
咄嗟に起き上がろうとしたれんの口元に人差し指を当て、無言の圧力で制す。
(どうして、デク君…!)
『み、緑谷君!?何故君が…!』