• テキストサイズ

【短編集】ILY【R18】

第6章 手を伸ばして2*グリムジョー


私は咄嗟に駆け出した。
どうせ追いつかれるだろうって、頭の中で理解していた。
だけど、会っちゃいけないんだ。

必死に逃げる私の努力も虚しく、座っていた地点から数十メートルの所で襟を掴まれてしまった。

「きゃっ!」

後に引っ張られてよろけて、座り込んでしまった私の前に立つのは、さっきまでずっと頭の中にいた人。
月明かりを受けて存在感が増した彼は、苛立ったように眉を吊り上げる。

「お前よォ…」

…言わなくちゃ。
もう一緒に居られない。居たくないって。

「ごめんなさい…もう、別れましょう…!」

「は?」

許して…グリムジョー。
そして自由になって。

「無理なの!グリムジョーとは、二人でいちゃダメなの!」

「っだとテメー…!」

私の服を掴み、顔を覗き込んだグリムジョーが驚く…私の頬に伝う涙を見て。

「もう、無理なの…」

次々と溢れる涙で言葉が震える。

「私の、せいで…こんな、に、なったあなたを…見て、られない!」

目を見張ったグリムジョーが手を離す。
珍しく動揺しているようだった。

「俺が、こんなになった…だと?」

「そうよ!あなたがっ、うらぎ、た、とか言った日、から…!」

私の言葉に何かを思い出し、グリムジョーの顔が険しくなる。

「…あの日は、」

覚悟を決めたように開かれた彼の口から、意外なことが飛び出した。

「お前に、捨てられたと思った。」

「へ…」

「よく考えりゃあ、すぐわかる事だった。お前が他の男とキスするなんて、有り得ねぇって…だろ?」

そういえば…あの人の支持者が、私に顔を近付けてきたことを思い出した。
まさか、そのこと…?

「あれは、あの男の人が顔を近付けてきただけで、何もしてない…!」

「…ああ。だけど頭に血が上った。お前に離れて欲しくなかった。だから」

「だからあんな乱暴したって!?めちゃくちゃよ!私がどんな思いで…!」

「やっちまったって思った。そしたらお前がもっと離れていく気がして、引き留めようと…」

「あ…」

初めて、グリムジョーが全てを明かしてくれた。
今更…今更こんな告白をするなんて。
別れるって決めたのに…

「シーナ、悪い…」

「ズルい…私…もう諦めようって思ってたのに…」

同じ目線になったグリムジョーが、切なそうに目を伏せる。
/ 245ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp