第6章 手を伸ばして2*グリムジョー
「…ずっと、好きだったの…どんな酷いことをされたって、こんなに好きなのはあなただけだったの…。」
鼻声で涙声で、大人の雰囲気など微塵もない告白だった。
涙を流し続ける私に、スッと伸ばされたグリムジョーの手が頬に触れる。
逞しくて、力強くて、温かい。
この手にどれほど惑わされて来たのだろうか。
私を殴る手、私を癒す手、私に触れてくれる手。
思えばいい事なんて無かった気がする。
なのに、恋人を見るような目で見つめられると、私の胸は無意識に高鳴った。
(やっぱり好き…不器用なくせに偉そうで、優しいくせにぶっきらぼう…。)
「…シーナ。」
慈しむような柔らかいトーンで言われ、舞い上がりそうな気持ちをグッとこらえて下を向いた。
「…俺もずっと愛してた。」
「っ…!」
頭の中が真っ白になって、世界が止まったようだった。
本当に今更じゃない…固く決めたはずの決意が揺らいだ。
「は、はは…この期に及んで、まだ私を側に置く気…?何を今更、」
「愛してる。意地になってずっと偽り続けてた。もうお前しかいないって前からわかってたのに、傷付けてばっかで、お前の優しさに反抗してたんだよ…。」
「…うっ、グズッ…」
最後の砦が崩壊したように涙が溢れた。
衝動的に力なく握った拳で、正面のグリムジョーの体をポカポカと殴る。
「っ、バカ!グリムジョーの変態!散々酷いことして、何が愛してる、よ!…そんなの、っ…」
クシャクシャになった顔をグリムジョーの胸に押し付けて、月明かりの中声もなく肩を揺らした。
(嬉しすぎるじゃない…)
もう泣いてるのか笑ってるのか、私はそっと抱き締めてくれたグリムジョーの嘘偽り無い優しさに、ずっと身を委ねた。
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