第6章 手を伸ばして2*グリムジョー
グリムジョーの部屋に戻ると、暗い雰囲気を漂わせ、ベットに座る彼がいた。
「グリムジョー?」
返事はなかった。
ただただ暗い空気を纏って静かに床を見ている。
そっと近寄ると、怒りを滾らせた目と合う。
久々に背中が凍り、言い難い恐怖に膝から崩れ落ちた。
「…ぁ…」
声が震えて蚊の鳴くような声しか出ない。
「…裏切ったのか」
「ぇ…」
押し潰されそうな圧の中、グリムジョーの一言が頭の中で回る。
(う、裏切り…?)
彼が何を言っているのかわからない。
ベットから降りてこちらに来るグリムジョーを見ていられなくて、私はただただ視線を泳がせた。
グリムジョーの手が私に触れる。
手は信じられない程冷たく、とても狂暴だった。
「うっ…!」
ギチギチと首を両手で締め上げられて息苦しくなった時、身体を床に投げつけられた。
「っ…」
嘔吐く私の顔の横を拳が通り抜け、ぶつかった床にヒビが入る。
「!?」
喉を押さえて苦しむ私を他所に、身動き出来ないことを笑うようにグリムジョーが上にのしかかる。
「…言ったよな…?俺を支えたいって…」
「え…」
何もわかっていないのに…どうしてこんなことになったのか。
一つハッキリ憶えていたのは、見下すように嘲笑するグリムジョーの目が笑っていなかったということだった。