第23章 《 side S 》寂しがり屋さん
玄関で「ただいまー」と言うと、静雄が慌てたような素振りで駆けつけてきた
でもその表情はすごく嬉しそう
「どうしたの」と言い終わる前に、たくましい腕に包み込まれる
「何か…あった?」
柔らかい金髪が頬に触れてくすぐったい
でま首元に顔を埋めてくる彼がすごく可愛くて、くすぐったいのも我慢できてしまう
どうしてこんなに甘えてくるんだろう
私を抱きしめて離さないその姿は、母親の帰りを待ちわびていた子供みたい
「……おかえり」
聞こえるか聞こえないかくらいの声で言う彼を、優しく抱きしめ返す
鞄を持っていない方の手で、優しく頭を撫でてみた
普段はなかなか届かない位置にある頭も、いまは撫でやすい位置にある
それと同時に普段は身長が高くて男らしい彼が、寂しがり屋で頬にスリスリしてくるような飼い猫にも見えてきた…
「さみしかったの?」
「んなわけねぇだろ」
そんな言葉とは裏腹に、私の身体を抱きしめる力は少しだけ強くなった
「ねえ、部屋行こ?」
そう言うと静雄は抱きしめる腕を解いてそっぽを向き、私の手首をぎゅっと掴む
その時の表情はあまり見えなかった
まるで、「こんなに甘えてしまって恥ずかしい、あんまり顔見られたくない」とでも言うような…
わたしは強く腕を引かれるのを感じて、慌てて靴を脱いだ