第10章 普通の生活
「その格好は、誰の趣味ですか?」
冷蔵庫から缶カクテルを一本取り出す臨也さん
お風呂上がりだからか、雰囲気までホカホカしている
「紛れもなく俺の趣味だよ」
彼の部屋着はグレーのフード付きトレーナーに、黒い短パン
そして白のスニーカーソックス
それと、
うさぎのスリッパ。
私には普通の、本当に至って普通の、シンプルなスリッパが用意されているのに…?
勿論彼が履いている“それ”に一番目が行ったし、どういう経緯でうさぎのスリッパを買うことになったのかも気になった
臨也さんがお店でうさぎのスリッパを買うところを想像して、少し笑いそうになったりもした
でもあえてスリッパの話題は出さない
彼なりの理由があるんだろう
それにしても、
“紛れもなく俺の趣味”って……
スリッパも臨也さんの趣味なんだ。
こんなに整った顔立ちのイケメンさんなのに。
そんなことを考え、少し笑いを堪えつつ
「可愛いし、似合ってます」
と言ってみる
「可愛いとかやめてよ、そんなの俺の柄じゃない」
そう言いながら少し微笑んで、私が座っているソファに向かってきた
彼は案外、可愛い部分も持ち合わせているらしい
冷蔵庫から取り出したばかりのカクテルは、用意した2つの小さなグラスに半分ずつ注がれた
冷気で少しガラスが曇る
「その部屋着も意外だったけど、猫舌っていうのも意外だったな〜」
「あんなの火傷しない人いないでしょ…なんてったって、熱々に煮込んだホワイトソースの中に埋もれた円筒状のマカロニ、その壁面にはまた熱が含まれていてね?そのソースの…
「はいはい」
私はそうやって軽く頷いた
それから、臨也さんがマカロニとホワイトソースの熱さについて語るのを頭がパンクしない程度に聞いた