第3章 技術
「リヴァイ、1つ頼みがあるんだが…」
エルヴィンが模造の一片を手に取りながらリヴァイに向かって、明らかに作り笑顔と分かる笑顔を見せながら言った。
「今日からユカを君の補佐にする」
「はっ!?」
エルヴィンの言葉にリヴァイは勿論だが、傍にいるハンジとミケも驚いた。
「な…何で俺なんだ?
俺とこいつの関係を知ってるだろ」
「だからだ」
すると先程手に取った模造の欠片をリヴァイの目の前でヒラヒラさせながら更に言葉を繋げた。
「ユカの状況を1番理解出来るのはリヴァイしか居ない。
妹となると尚更だ。
だから兵士長補佐にするんだよ」
「確かに一理あるかもしれないが、こいつは兵士じゃない…」
「今から兵士だ。
それに、もうユカは兵服を着ているだろう?」
エルヴィンが放つ言葉1つ1つに眩暈を覚える。
実力は確かだが兵士では無いユカを今から兵士として扱い、更には兵士長補佐にするには無茶苦茶だ。
すると黙って見ていたハンジとミケが揃いも揃って同じ言葉を言った。
「「ファイト!」」
「ファイトじゃねぇ!!!!
ユカ、お前からも何か言え!」
「エルヴィン団長の命令に従う。
それが兵士」
「おま…」
「これがユカの答えだよ」
目の前に立ってニコニコと笑顔を見せている人物を睨みながらリヴァイは眉間に皺を寄せる。
「てめぇ…どうなっても知らねぇぞ…」
「兵士長は忙しいから全力で手伝ってあげてくれ」
ユカの頭をポンポンと叩きながらエルヴィンが立ち去るとハンジとミケも続いて立ち去って行った。
ハンジに至ってはニヤニヤと笑っている始末だ。
ユカ以外誰も居なくなった森の中でリヴァイは1人項垂れる。
「お兄ちゃん…いや、兵長、宜しくお願いします」
「少しでもミスしやがったら直ぐに補佐を辞めて貰うからな」
「はい」
少し脅しを入れたつもりだったが効果が無いらしく、笑顔で返事をされ思わずため息が出たがもう遅い。
リヴァイは諦めて歩いて兵舎へと向かった。
勿論、リヴァイの後ろにはユカが張り付いていた。