第12章 喧嘩は迷惑かけないように (吉原炎上編)
激しい爆音と共に、神威・・・・ではなく、遊女が天井に叩きつけられた。
『あ~あ、キレちゃった』
鳳「クックックッ、貴様ら、わしを査定に来たのだろう」
旦那は立ち上がり、膳を蹴飛ばした。
鳳「気づかぬと思っていたか。元老の差し金だろう。今まで散々利をむさぼりながら、巨大な力を持つ吉原に恐れを抱き始めたかジジイ共」
旦那は着物の上半分をはだけさせた。
鳳「吉原に巣食う、この夜王が邪魔だと。ぬしらにこの夜王、鳳仙が倒せると」
すごい殺気だ。さすがは夜王と呼ばれるだけはある。完全にお怒りモードだ。
『旦那の出方次第よ。夜王といえども春雨と正面から闘り合う気にはなれないでしょう?よく考えて行動した方が身のためだと思うけど』
私は旦那を見据えた。
神「そいつは困るな」
旦那の後ろから声が聞こえた。
神「そんなんじゃ、俺のこの渇きはどうすればいい?女や酒じゃダメなんだよ。俺はそんなものはいらない」
声の出所を見れば、床の間に座った神威の姿が。
神「そんなもんじゃ俺の渇きは、癒えやしないんですよ」
旦那の口元がにやりと怪しく動いた。
刹那、神威が蹴りを、旦那が腕を突き出した。
神威の方が一瞬速かったためか、旦那の右頬にはかすり傷がついた。
神「修羅が血。己と同等、それ以上の剛なる者の血をもって初めて・・・・・・・・・・俺の魂は、潤う」
神威の顔が激しく歪んだ。眼には獣の光が宿っている。
『さ~てと・・・・楽しい余興を見るとしますか』
私もそれにつられて、口元に笑みが浮かんだ。