第6章 自分の信念は貫き通せ (真選組動乱編)
『策士、策に溺れる・・・か』
私は伊東を見下ろした。
伊「ぶざまだな・・・僕は・・・」
『今のお前はぶざまじゃない・・・そう感じるのは私だけか?』
伊「!?」
『気づいたじゃないか・・・・いや、気づけたでしょう?伊藤さん』
私は優しくそう言った。すると、伊東はフッと笑った。
伊「この人たちのように腐れ縁という形の絆があった。僕はその事さえ知ろうとしなかった・・・」
伊「人と繋がりたいと願いながら、自ら、人との絆を断ち切ってきた。拒絶されたくない。傷つきたくない。ちっぽけな自尊心を守るために、本当にほしかったものさえ見失ってしまうとは」
伊「ようやく見つけた大切な絆さえ、自ら壊してしまうとは・・・」
この男は悲しい奴だ。もっと早くに気づけていたら、何かが変わったのに・・・もっと早くにわかっていたら、こんな結末にもならなかったのに・・・
伊「何故・・・何故いつだって、気づいた時には遅いんだ。何故、共に戦いたいのに―立ち上がれない。何故、剣を握りたいのに、腕がない。何故ようやく気づいたのに
僕は、死んでいく」
私はそっと伊東を抱きしめた。伊藤は私の腰を強く引いた。
そして、うわ言のように呟いた。
伊「・・・死にたくない。・・・死ねば、一人だ。どんな絆さえ届かない・・・もう一人は・・・」
『大丈夫、大丈夫だから。一人じゃない、一人にしない。だから・・・』
原「そいつをこちらに渡してもらえるか」
私の言葉を遮ったのは原田隊長だった。
新「・・・・・・お願いです。この人は、もう・・・・」
原「万事屋・・・今回は、お前らには世話になった。だが、その頼みはきけない」
新八君が反論した、だが通じるはずがない。
隊「そいつのために何人が犠牲になったと思っている。裏切り者は、俺達で処分しなきゃならねェ」
新「助けてもらったんです。それに、この人・・・」
それから先の言葉は近藤さんによって遮られた。
新「近藤さん!!」
近「連れていけ」
私は隊士たちが近づいてきたのでそっと放し、伊東の耳元で呟いた。
『みんな、繋がってるから。一人じゃない』