第18章 昔の事を語っている奴は、たいてい寂しい奴だ
『それを見たうえで、まだ私の前で、語ることができる?それを見たうえで、彼らを弱いと言える?』
反応を示さない永松を笑った。
『たかだか私の過去の一部を覗き見ただけで、そんな風になるっていうのに・・・・』
そして私は永松の髪を掴み、眼を合わせる。
『そんなアンタが・・・・・桂小太郎を、高杉晋助を、吉田松陽を・・・・語る資格があるのか!?』
私は声を荒げた。そして、永松の髪を放した。
途端に永松が笑い始める。
怪訝な顔をして睨んでいると、笑い声は治まった。
永「幕府の犬になり下がったテメェに・・・・・穏健派になり下がった桂に・・・・・・天人なんかと手ぇ組んでる高杉に・・・・・・俺の苦しみの何がわかんだ!!」
永松は急に声を荒げた。
永「俺は天人達に全てを奪われた。だから、忠誠をつくし、油断したところで食ってやったんだ!なのにお前らはなんだ!?何故のうのうと生きていられる?何故幕府に仕える?何故天人なんかと手を組める!?・・・・そういうのが腹立たしんだよ!」
永松は言い終えると、肩で息をした。
それもそうだ、あんなに一気に喋ればきついだろう。
『・・・・私だって、何度この国、滅ぼしてやろうか思ったか知らない。先生を奪ったこの世界、家族を奪った幕府・・・・憎いよ。それでもあいつが必死で耐えてる。それどころか・・・・護ろうとしてる。そんなあいつを見たうえで、ここを壊したいだなんて・・・・・思えなくなった』
永「・・・・白夜叉・・・・・か」
銀時、一番辛いあんたが苦しんでいるなら、私も一緒に苦しみたいんだよ。
もうあのときみたいな顔をしてほしくない。
バカみたいに笑っていてほしいんだ。
『ヅラが穏健派になろうが、晋助が武闘派だろうが・・・・・やりたいことはやっていればいい。どう転んだって、私はあいつらに勝てない。・・・・・それに・・・』
私は永松の体にささった針を抜いた。
『だれ一人として、魂は折れてない。まっすぐに立っている。私はそんなあいつらを見るだけでいい。もう二度と・・・・あんな顔をしてほしくない。それなら今みたいに、バカやってる方がよっぽどマシなの』