第18章 昔の事を語っている奴は、たいてい寂しい奴だ
そして、吉村が監禁されているという廃工場についた。
近藤さんが作戦をぬかしているが、鼻からそんなものはあてにしていない。
『必要ありませんよ』
私はそう言うと、シャッターを斬った。激しい音をたて、斬り刻まれたシャッターが落ちてくるの。
近「ちょっとぉ!?何してんの?中には人質が・・・・」
砂埃がたった。
『あの男は、私にしか興味がない。吉村を捕まえたのも、私をおびき寄せる罠だったんですから』
すると、中の男がニヤリと笑った。
永「その通り、あの隊士はちゃんと逃がしてやった・・・・にしても、罠だと解っていながら飛び込んでくるとは・・・・・・相当のバカだな」
永松はそう言って、紅桜を抜いた。
満月の晩だ。紅桜の刃は不気味に輝いていた。
私も紅桜を抜く。途端に周りの空気が変わった。
永「それが本物の紅桜か・・・・・・・お前の憎しみを吸い、恐ろしぐらいに光り輝いているな」
『戻るとする。アンタの言った通りに』
私は刀を構え、ニヤリと不敵に笑う。
そして私は一瞬で永松を斬りつけた。
永「なっ・・・・」
『アンタは私を・・・・・いや、舞鬼神を怒らせた』
そしてそのまま横の壁に叩きつける。
『一夜限りの大復活だ。それ相応に相手してくれよ?』
そのまま貫こうとしたが、避けられ、代わりに私に向かって刀が振り下ろされる。私は片手でもう一本の刀を抜刀し、刃を受け止めた。
そして、相手の力で乱れた体を反転させ、そのまま永松の顔面に蹴りをお見舞いする。
永「ぐあっ!」
永松はもう一度壁に叩きつけられ、今度は私の投げつけた針で経穴を突かれ、身動きをとれなくした。
永「体が・・・」
『毒針を使わなかっただけでも感謝してほしいわね。紅桜を手に入れようが、所詮人を捨てきれない。なら体さえ、封じてしまえば、こっちのもの』
そして私は右腕に紅桜を突きさした。
永「ぐあああああ!」
永松は唸り声をあげた。
『この刀はね、私以外が触れると、そんな風にいろんなものが見えるのよ?』
そして、すぐに右腕から紅桜を抜く。
『それが私の心の中にある憎しみ、恨み、怒りよ。そしてあなたの見えたものは、きっと私の過去だったはず。それは私を縛り付けるものでもあり、同時に愛しているものでもある』
そして私は、二本の刀を鞘におさめた。