第18章 昔の事を語っている奴は、たいてい寂しい奴だ
土方目線
振り向いた瑠維の顔を見た時に、俺の背筋に悪寒が走った。
いつも笑ったり怒ったり、表情をクルクルと変化させている瑠維の顔は、怒りで満ち満ちていた。
いつもなら見ることの出来ない眼をしていた。
激しく燃え上がり、獣のような眼だった。
これが舞鬼神、これが桂や高杉と並ぶ、伝説の攘夷志士。
俺達を見ても表情すら変えない。笑いもしない。
・・・・・・いや、俺達すら見ていない。
土「一人で行っても無謀なだけだ。お前が誰であろうと、隊士に死なれると困る」
突き放すようなひでぇ言い方しかできねぇ。
だが、普段の瑠維なら膨れたりするが、今はまったく表情を変えない。
『じゃあ何?私の代わりにあの男を殺すの?』
抑揚がまったく聞き取れない。恐ろしい喋り方。
近「瑠維ちゃん、トシはもっと周りに頼れって言ってるんだ。だから・・・・・」
『頼れ?ふざけたことを・・・・・私が何故怒っているのかも解らない人たちを頼らないといけないんですか?どうしてここまで怒っているのかも解らないのに?』
土「確かに解らねェ。お前が何考えてるのかさっぱりだ。何でそんなに怒ってるのかも理解不能だ」
『なら・・・・・・・!?』
反論しようとする瑠維を思いっきり抱き寄せた。
土「それでもお前が苦しんでいることぐらい解る。怒っていることも、あの男を憎んでいることぐらいわかんだよ。それで十分じゃねぇのか?」
俯いていた顔をあげさせると、そこには瑠維が居た。
舞鬼神ではなく、瑠維が。
土「お前の苦しみ、俺が半分背負ってやる。だから、俺がお前からもらった幸せ、半分やるからよ。だからもう、そんな顔するんじゃねぇぞ」
そう言って、額にキスを落とした。